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感想文

感想を長々と書くところ

『マクベス』7/14夜の部③

丸山隆平にしか演じられないマクベス=マルベスってなんだったんだろうって考えてみた。

歴代マクベスを演じてきた役者さんに比べて丸ちゃんは若いんですよね。
演出の鈴木裕美さんも「若さ故の疾走感」って言葉をパンフレットでつかっているんですけど、このマクベスは欲に溺れるというよりは生き急いでしまった感がある。

丸山版マクベスで一番思ったのはマクベスが「幼い」なということ。
どうも「若い」より「幼い」がしっくりきます。

まず、丸ちゃんの声が甘くてちょっと舌足らずだということ。
これが、シェイクスピアをやる上でネックになるんじゃないかなと思っていたんですが、いい方に作用したと思います。
あえてここにももう一回書くけど、夫人が馬乗りになってマクベスにちゅっちゅちゅっちゅするシーンがあって、その時夫人の下で足をばたばたしながら「もっと!もっと!」って言ってるのがまあー可愛くて!!!めちゃくちゃ可愛かったんですよ!!!お前さっきまでキリッとしてたじゃん、めちゃくちゃ可愛い!!!あー、可愛い!!!…きりがないな。
どんな暴言であっても声が甘いので、言葉がふわふわ定まらないような、不安定な感じになるのが良かった。
あと、これは芝居の癖なのかもしれないけど手の動きの多さ、目の動きの大きさも幼く見えた。

年を重ねる程、行為と感情が真逆の方向に向いていたとしても何事もないかのようにやり過ごせるようになる。周りが見えてくることで物事の引き際がわかるようになるし、ちょっと行き過ぎたと思っても上手いこと誤魔化したり出来るようになる。
その点、マクベスは行為と感情の方向が常に同じだし、行き過ぎたと思ってからの誤魔化し方が凄く下手。それが見ていて物凄くしんどそうだし、「幼い」。

これはマクベスの「幼さ」が生んだ悲劇なのかもしれないなとちょっと思ったりしたんですよね。

あと、一番印象に残っているのが夫人が亡くなったことを知った後のシーン。
戯曲を読んだ時に、夫人を突き放すような印象を受けて「あ、ここで本当に人間じゃなくなったんだな」と思った。
今回のお芝居だとここで元のマクベスに戻る、というか人間に戻る。
それまで幻覚やら亡霊やらで目線がふらふらしているんですけど、夫人の訃報を聞いた後にぐっと目の焦点が定まるんですよね。そして言葉がこぼれるように溢れて、顔が崩れる。その様子が迷子が不安に駆られて泣き出す様子に似ていて「幼い」。そしてそれはずっと強張っていたマクベスの顔が緩む瞬間でもあり、泣いているのかまではわからなかった(私が泣いてしまって見ることが出来なかった)けれど「悲しい」という感情が見える。

ゾクッとしました。
丸ちゃんって感情表現が下手くそな人だと思っていたから。
喜怒哀楽を上手く伝えられなくて、にこにこして誤魔化してしまうような時が、たまにあるなって。いつもにこにこしていてアイドルとして本当に素敵だと思うけれど、時々辛くないのかな?と思ってしまうというか。
そんな丸ちゃんがこういう感情的な表情をするんだ…と思った時にもっとこの人の芝居が観たいと思いました。

マクダフとの最期の決闘の前、夫人の亡霊を見つめた後に「誰が降参などするか、」につながるところはベタって言ったらそれまでだけど、やっぱりいいなと思いました。ああ、褒めて欲しかったんだなって愛おしくなる。愛こそ全て、それでいいと思う。

マルベスは丸ちゃんだから作り上げることが出来た、幼いけれど人間味のある愛らしいマクベスでした。